合意形成実践テクニック

チームの働き方に関する意見対立を解消!多様な勤務スタイルを尊重し、合意形成へ導く方法

Tags: 意見対立, 合意形成, ファシリテーション, 働き方, リモートワーク, チームマネジメント

はじめに

IT企業のプロジェクトリーダーとして、技術的な課題解決能力は多くの場面で求められます。しかし、チームを円滑に運営し、プロジェクトを成功に導くためには、多様なメンバー間の意見をまとめ、共通の目的に向かう合意形成のスキルが不可欠です。特に近年、リモートワークやフレックスタイムなど、働き方に関する選択肢が増えたことで、チーム内で意見が対立する場面が増えています。

特定の働き方を強く希望するメンバーがいる一方で、別の働き方が最適だと考えるメンバーも存在し、これがチーム内の分断を生んだり、議論が感情的になったりして、プロジェクトの進捗に影響を及ぼすことがあります。このような働き方に関する意見対立は、個人の価値観やライフスタイルに深く関わるため、解決が難しいと感じるかもしれません。

この記事では、ITチームで発生しやすい働き方に関する意見対立に焦点を当て、多様な勤務スタイルへの希望を尊重しつつ、チームとして納得できる合意形成へ導くための具体的なステップと実践的なアプローチをご紹介します。この記事を読むことで、感情的な対立を避け、チーム全体のパフォーマンスを向上させるための道筋を理解できるでしょう。

なぜ働き方で意見対立が起きやすいのか

働き方に関する意見対立は、表面的な希望の違いだけでなく、個人の深い価値観や状況に根差していることが多く、そのため解決が難しくなりがちです。主な原因として、以下の点が挙げられます。

これらの要因が複雑に絡み合い、単なる好みを超えた、個人の権利やチームへの貢献度に関わるデリケートな問題として扱われがちです。

働き方に関する意見対立を合意形成へ導くステップ

働き方に関する意見対立を解消し、チームとして納得できる落としどころを見つけるためには、段階的なアプローチが必要です。以下に、プロジェクトリーダーとして実践できる具体的なステップをご紹介します。

ステップ1:現状と希望、懸念の丁寧なヒアリングと共有

まずは、チームメンバー一人ひとりが現在の働き方についてどのように感じているか、そしてどのような働き方を希望しているか、さらにその希望の背景にある理由や、懸念している点を丁寧にヒアリングすることから始めます。

ステップ2:多様な意見の可視化と背景の深掘り

収集した多様な意見や希望、懸念をチーム全体で見える化し、共有します。この段階では、意見の対立を問題視するのではなく、「多様な考え方があること」をチームとして認識することが重要です。さらに、それぞれの意見の「なぜ」を深掘りし、表面的な希望の裏にある、個人の置かれた状況や大切にしている価値観を理解するよう促します。

ステップ3:共通の目的と制約条件の確認

チームとして働く上で、どのような目的を達成する必要があるのか、また、どのような制約条件があるのかを明確に共有します。これは、感情論や個人的な希望だけでなく、チームやプロジェクト全体の視点から働き方を検討するための重要な土台となります。

ステップ4:複数の選択肢の検討と評価

ステップ2で明らかになった多様な意見と、ステップ3で確認した共通の目的・制約条件を踏まえ、具体的な働き方の選択肢を複数案検討します。そして、それぞれの選択肢が、ステップ2で深掘りした個別の希望や懸念(ケーススタディで例示した「非公式なコミュニケーション」「新人育成」「集中環境」など)に対して、どのように影響するかを評価します。

ステップ5:合意形成と合意内容の文書化

検討・評価した選択肢の中から、チームとして最も「納得」できる働き方を合意形成します。必ずしも全員一致を目指す必要はありませんが、議論プロセスを通じてそれぞれの意見が尊重され、チーム全体として「これでやってみよう」と思える状態を目指します。合意した内容は、認識のズレを防ぐために明確に文書化します。

ステップ6:試行と継続的な見直し

一度合意した働き方が常に最適とは限りません。実際に運用してみて生じる課題や、チーム状況の変化に応じて、働き方や関連ルールを継続的に見直す機会を設けることが重要です。

合意形成におけるファシリテーションのポイント

働き方に関する意見対立の合意形成を進める上で、プロジェクトリーダーはファシリテーターとしての役割を担います。成功のためのポイントは以下の通りです。

まとめ

ITチームにおける働き方に関する意見対立は、多様な価値観を持つメンバーが集まる現代において避けては通れない課題の一つです。しかし、この対立を単なる問題として捉えるのではなく、チームとしてより良い働き方を見つけるための機会と捉えることが重要です。

この記事でご紹介した「ヒアリング・共有」「意見の可視化・深掘り」「目的・制約の確認」「選択肢の検討・評価」「合意形成・文書化」「試行・見直し」という6つのステップと、ファシリテーションのポイントを実践することで、感情的な対立を避け、チームメンバー一人ひとりの希望を可能な限り尊重しつつ、チーム全体のパフォーマンスを最大化する働き方について、建設的な合意形成を進めることが可能になります。

プロジェクトリーダーとして、これらのスキルを活用し、多様な働き方を受け入れ、それをチームの力に変えていくことで、より強く、生産的なチームを築き上げてください。